大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)437号 判決

被告人 藤野武

〔抄 録〕

弁護人等控訴趣意第一点について。

然し乍ら、本件記録を精査し、原判決を仔細に検討勘案するも、原判示事実は、原判決挙示の証拠により優にこれを証明することができ、原判決にはいささかも事実誤認の違法あることなく、又原判決が原判示事実に対し刑法第一九七条第一項前段を適用したのは正当であつて毫も違法の廉あるを見ない。

所論によれば、被告人が判示人夫名義の職員であることは刑法第七条に所謂公務員でない旨主張するけれども、同条に所謂公務員は官制職制によつて其の職務権限が定まつているものに限らずすべて法令によつて公務に従事する職員を指称するものであつて其の法令中には単に行政内部の組織作用を定めた訓令と雖も抽象的の通則を規定しているものであれば之を包含するものであることは最高裁判所の判例の示すところであつて(昭和二四年(れ)第八五六号第三小法廷昭和二五年二月二八日判決参照)当裁判所も亦これに従う。而して被告人が本件行為当時関東地方建設局の人夫名義の職員であつたことの法令の根拠は建設省訓第五号「国家公務員法第五五条第二項の規定により任命権の委任に関する訓令」に存すること洵に明かであるから本件行為当時被告人が刑法第七条に所謂公務員であつたことは疑の余地なくこれに反する所論は独自の見解であつて到底採用し難い。又所論によれば本件行為当時仮に被告人が公務員であつたとしても、被告人の従事する仕事ないし事務は刑法に所謂「公務」とは認められない旨主張するのであるが、苟くも公務員たる被告人の職務に該当する以上其の職務の性質の如何は毫も問うところでなく、単純なる労務も固よりこれを公務と謂うことができるのみならず、本件被告人はその形式は人夫名義の職員であつたが、単なる人夫として単純なる労務に従事していたのではなく公務員として上司の命により原判示にある如く建設省関東地方建設局工務部電気通信課に勤務し企画係として物品購入、電力設備の設計、施行、監督等の事務及び同局管下江戸川工事事務所篠崎出張所管内行徳変電所の建設工事に際し工事監督をも担当していたものであることは、原判決挙示の当該証拠により洵に明かであるから、これ等の職務がその公職に属すること、従つてこれが当然公務員涜職罪の対象となり得ることは論を俟たない。これに反する所論は徒らに独自の見解を主張するものであつて、到底採用し難く論旨は総べてその理由がない。

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